aside_north_pt1_『北の国の政治家の息子ウラジミール_"オーロラ大帝"』
彼の家には今日も政治的癒着を切望する大人が訪れていた。
彼の父親は今日も彼の街の名前の由来となった大帝気取りでパイプをくゆらしながら応接室にて彼らの話を偉そうに聞いていた。
ウラジミールはそんな父親の姿を見飽きていた。
そして憎んでいた。
ウラジミールは頭が良かったけれど、ほとんど小学校に行くことはなかった。
彼の家系は代々政治家で、彼もそうなることを半ば約束されていた。
しかし、彼はそれを希望してはいなかった。
それどころか全く反対のモノになろうとしていた。
彼はその全く反対のモノになるための行動を既にとっていた。
彼は今日も学校に行くふりをして、家の裏にあるマンホールへと入っていった。
しばらく下水道の暗がりを歩くと、徐々に虹色に光る一角が出現した。
彼はそこに吸い込まれるように入っていく。
ウラジミール「今日はこれだけか?」
70名程いる倉庫を改造して造った部屋。
部下1「はいオーロラ大帝、今日はこの地区の中学生たちは期末試験なので、今いるのは小学生と、マンホールチルドレンだけです。」
ウラジミール「そうか・・・戦時中だというのにこの国は・・ん?何で女がいるんだ!」
部下2「はい!オーロラ大帝、この女はどうしても大帝に会いたいと言って聴かんのです。何度追い返してもしゃにむにくらいついてきてしまって・・」
ウラジミール「女は駄目だ!すべては女で駄目になる!この国を壊したのは女そのものなのに何故それが解らない?もっと歴史を勉強しろ!」
女「私、女じゃないもん!」
ウラジミール「だまれ!音間(おんかん)が歪む!早くその女をつまみ出せ!!」
数人の男子によって両腕を抱えられる10歳にも満たないような女の子、体すべてを使って必死に抵抗する。
女の子「私、女じゃないもん!男の子より強いし、私のお父さんは本当のテロリストで、合衆国で本当にテロルを起こして死刑になってるんだもん!」
ウラジミール「いくら本物でも駄目だ!女の声は高過ぎて、空間を歪ませる!本当に入りたかったら、チンポを付けて、その声を低くしてからくるんだな!!とにかくつまみ出せ!!」
女の子「私、お父さんもお母さんももう居ないの、だから仲間に入れて〜!!」
つまみ出される女の子。
ウラジミール「ここにいるやつの大半はそんなやつばかりだ。珍しくも何ともない・・」呟く。
気を取り直して皆へ向き直すウラジミール。
ウラジミール「この国の大人は腐り果てている、何一つ成功できなかった負け犬どもだ。すべては欲望の果てに素晴らしい思想も文化もすべて壊してしまった。だけど、僕らは違う。すべてが手に入り、すべてが無い時代に生まれた子供たちだ。だから、今までにどこにも無かった新しい国が出来る筈だ。それは何も無い国・・・ただあるのは心の美しさときれいな空気。まずは汚れた世界を一掃して更地にする。そして僕らはその時に死ぬ。しかし、次の子供が新しい世界を作る。だから僕たちは核爆弾を世界中に落とさなければならないんだ・・そして、これだけはみんな忘れないでくれ、大人になったらみんな死ななければならない、それは革命の途中でもだ、すべては子供だけでやらなければいけない、これから作る新しい世界には大人はいない、16歳までの世界なんだ。」
部下3「昨日ピスチェフが自殺しました。」
ウラジミール「それで良いんだ。下手にいつまで生きるか解らず生きるよりも、しっかりと16年間生きる。そして自分で死ぬ。僕もあと5年で死ぬ。たっぷり時間はある。しかし今はチャンスだ、時間を無駄に使わずに生きる。それが僕たちの信念だ。いつからか、僕たち人間は時間を無駄使いしたあげく、ねじ曲げて壊してしまった。すべてを空白に戻そう。そして、正しい時間を作ろう。ピスチェフに心を・・」
右手を右耳にあてるウラジミール。
深々と東洋式のお辞儀をする部下たち。
ウラジミールもお辞儀をする。
ウラジミール「さぁ、取りかかろう。」
持ち場に付く部下たち。
虹色に光っていたコンピューターの待ち受け画面が一斉に白く変わる。